33歳の聡は、無職で引きこもりの生活を10年も続けていた。両親の浩司と香織は、息子が自立できるようにと願っていたが、どのように関わればよいのかと悩んでいた。毎日のように「どうにかしなきゃ」と思うものの、ただ食事を運ぶだけで終わってしまう。そんな生活が続いていた。

ある日、浩司は友人との会話の中で、「失敗を恐れず、自分の選択を引き受けさせることが大切だ」と聞いた。友人は、自分の子どもが何かを選ぶ際には最後まで見守ることが重要だと語った。浩司はその言葉に心を動かされ、自分も聡に対して同じように接することを決意した。

翌日、浩司は聡にこう言った。「聡、今のままでい続けることがいいとは思わないが、君が自分で決めた道には私は口を出さないよ。ただ、一歩踏み出すのは君自身なんだ。」聡はその言葉に反応し、心の中で考えることができる時間を持った。浩司は、小さな挑戦から始めさせてみることが効果的だと信じていた。

数週間経ったある日、聡が急に外出することを決めた。浩司は驚いたが、それを止めたり、無理に引き留めようとはしなかった。結果的に聡は友人との再会を果たし、少しずつ自分の居場所を再発見することができたのだ。失敗や恥を恐れずに、自らの人生を選ぶ姿に浩司は感動すら覚えた。

香織もまた、最初は心配したが、夫の姿を見て自分も見守ることができるように成長した。聡が自分の選択に責任を持つ姿を支えることの大切さを、彼女は学んでいった。こうして、家族の間に深い信頼関係が生まれ、聡の自立へ向けての道が開かれていった。