はじめに

私がなぜひきこもり支援を始めたのかとよく聞かれます。

そのお話を長くなりますが、お読みください。

【なぜひきこもり支援をしているのか】

それは

「息子のひきこもり経験を通して得た社会復帰のノウハウを見つけたから」

というシンプルな理由です。

ノウハウを見つけてしまったなら、使わなければならない。

より精度の高いものに、より成果の上がるものに

そう考えてこの事業を立ち上げました。

私には2人の息子がいます。

兄は不登校、弟はひきこもりを経験しています。(今はもう30代となって就労しています)その2人のことで悩み、感情を揺さぶられ、自分自身の内側に向きあうことになりました。

【兄の不登校からのノウハウ】

小学6年頃から休みがちになって、中学では時々登校、高校になんとか進学はしたけれど

出席日数が不足して中退という経緯。

私自身、登校拒否の経験があり、不登校であっても勉強をしていればいいと安易に考えていました。

そして、その頃の私は仕事に夢中で息子(兄)の苦しみに気づこうともしていませんでした。

いよいよ、高校の出席日数が足りなくて、これ以上欠席が続くようなら進級はできないと学校から言われました。

息子(兄)が、登校に付き合ってくれたら学校に行けるかもしれない・・・というので、

出勤時間を遅らせて付き合うことにしました。けれど息子(兄)はなかなか学校に行けません。

仕事に行けないこと、高校中退になってしまうという2つのイライラで息子に怒りをぶつけていました。

結局、息子(兄)は高校を中退することになりました。

そんなある日、ふと気づきました。

私が不安に思っていたのは、息子(兄)のことではなく

自分の仕事のことだったのでは?

自分の仕事が進まない、評価が下がる、そんなことしか考えていなかったんです。

息子(兄)がなにに苦しんでいるのか、など考えてもいなかったことに気づきました。

その直後、息子が(兄)自分から不登校になった経緯を話し始めました。

そして、知り合いのお誘いもあってアルバイトを始めました。

親が自分の不安や苦しみを、息子(兄)に解決してもらおうとしていた。

息子(兄)の苦しい気持ちを理解しようとしていなかった。

このことに気づいただけで、息子(兄)は変わり始めたんです。

親自身が変われば、子どもは変わる

これが1つ目のノウハウです。

【弟のうつからのノウハウ】

2つ目のノウハウは息子弟からです。

弟のほうは、大人になって就職をしてからうつ病になりました。

しかも、二度三度と再発しました。

そのたびに仕事を辞め休養をしていました。

兄の時のことで学んでいたはずでしたが、最初の頃は苛立っていました。

なぜなら、その頃私は、コーチングのインストラクターをしていて

人を元気に行動できるようにする仕事をしていたからです。

その自分の息子(弟)が「うつ」なんて・・・

私の息子なら、対処できるはず。

自分の息子がうつになったなんて、生徒さんに言えない・・・

またもや、自分の苛立ちを息子(弟)に解決してもらおうとしてた、とハッとしました。

私自身が徐々に冷静さを取り戻し、今は休養させよう

彼の心の葛藤を分析してみようと方針を変えました。

働きたくても働けない

働くと、またこんな状態になってしまうかもしれない

自分自身が情けない

周りに迷惑ばかりかけてしまう

けれど、なにもできない

そんな気持ちでいたのではないかと推測をしました。

休養をとって2年ぐらい経過して

徐々に笑い声も聞けるようになった頃

ふと気づきました。

これまでなら、この状態に戻ればそろそろ仕事を探しに出るはずなのに

なんでだろう?

もしかしたら、仕事をするとまた再発すると不安なのかも

そこで、息子(弟)に聞いてみました。

「もしも、家でできるような仕事があったらやる?」

すると

「やるよ」

との返事。

やっぱりそうなんだ。

仕事をしたい。

けれど再発するかもしれない。

どうしたらいいかわからない。

そう考えていたのでしょう。

もしかしたら、世の中のひきこもりと呼ばれる人たちも

同じように家でデキる仕事ならやりたいかもしれない。

これは試してみる価値があるな。

これが2つめのノウハウです。

「今のままでもできる仕事」

これです。

その後、モニターテストを募って、実際にひきこもっている人にプログラムの提供とヒアリングをさせてもらいました。

当初、私はカウンセリングの時間も必要だろうと考えていました。

けれど、モニターの彼は「それはいらない、仕事につながるものがほしい」という意見でした。

メールの送り方、履歴書の添削、面接の練習などをオンラインで実施して

彼はアルバイトとして就職をしました。

うちの息子(弟)は、ポスティングから始めて、就職し、

ひとり暮らしを始めました。

ひとり暮らしを始めるときに、彼に伝えました。

あなたはブレーキの壊れた自転車で、高速道路を走ってるようなもの。

チェーンやペダルが壊れていくし、止まろうと思っても自分では止まれない。

だから、周りの責任を負っちゃいけない。

自分のメンテナンスが一番重要

2週間、仕事に行けなかったらすぐ戻ってらっしゃい。

ひきこもりの人への大きな誤解は

「働く気がない」

と思われている点

実際は、働く気があり過ぎて、空回りしているんです。

そこを調整すれば、彼らは軌道に乗ります。

なによりも、関わる人が彼らのことを

「働きたい人」として接すること。

そこに疑いをもたないでいる人には彼らは本心を伝えてきます。

私は、自分自身の経験から見つけた2つのノウハウ

親には、自分が変わること

本人には「今のままでもできる仕事」を提供すること

このノウハウを見つけてしまった責任として、

この事業をすることにしたのです。