「冷徹」などの言葉を使わず、なぜ不登校の大学生が思考のループに陥るのか(認知のゆがみ・破局視)を平易に解説し、そこから抜け出させるための具体策「猫だまし(思考の遮断)」と「スモールステップの指示」についてロジカルに解説しています。
【大学生の不登校】部屋で考えすぎて動けない息子へ。思考のループを断ち切る「相撲の猫だまし」テクニック
「行ったほうがいいのは分かっているけれど、今さら行ったところで単位は取れない……」
「じゃあ退学するべきか?でも中退したら将来どうなる?……」
不登校になっている大学生のお子さんと話していると、頭の中でグルグルと同じ悩みを巡らせていて、結局何も行動を起こせない姿にヤキモキすることはありませんか?
実は、大学不登校に陥る子のほとんどが「考えすぎ(思考過多)」の状態に陥っています。
完璧な解決策や「絶対に失敗しない方法」を探し求めるあまり、エンドレスで思考を続け、脳のエネルギーを使い果たして動けなくなっているのです。
支援の現場で10年以上にわたり1,000人以上の当事者やご家族に向き合ってきた経験から断言できますが、考えすぎている子に「どうするの?」「よく考えなさい」と促すのは逆効果です。
必要なのは、悩み続けさせることではなく、「一度その思考のループをパンッと断ち切ってあげること」です。
この記事では、不登校の大学生が陥りがちな「考えすぎ」のメカニズムと、その思考を停止させて次の行動へ向かわせる心理テクニック「相撲の猫だまし戦略」について詳しく解説します。
1. なぜ不登校の大学生は「考えすぎて動けなくなる」のか?
不登校の大学生の頭の中では、以下のような「終わりのない思考の葛藤」が24時間繰り広げられています。
- 「大学に行かなきゃ」という義務感
- 「でも行ってもどうせ単位は取れない」「周りの目が怖い」という不安
- 「じゃあ休むか……」という罪悪感
- 「でもこのまま休んでいたら人生が終わる」という焦り
この1〜4の思考がエンドレスで回転し、頭の中が常にパニック状態になっています。
心理学では、このような状態を「破局視(はんきょくし)」や「全か無か思考」と呼びます。「100点満点で完璧に復帰できる方法がないなら、0点(何もしない)しかない」と思い込み、失敗を恐れるあまり「絶対に傷つかない選択肢」を思考の中で探し続けているのです。
しかし、世の中に「絶対に失敗しない完璧な方法」など存在しません。考えれば考えるほど不安が強まり、行動を起こすハードルがどんどん上がっていく悪循環に陥っています。
2. エンドレス思考を止める!「相撲の猫だまし」テクニックとは?
頭の中で悪い妄想や思考のループが止まらなくなっている子に対して、言葉で「悩むのをやめなさい」「考えすぎだよ」と言っても、思考は止まりません。
そこで有効なのが、相撲の決まり手である「猫だまし」のようなアプローチです。
相撲の「猫だまし」とは、立ち合いの瞬間に相手の目の前でパンッと手を叩き、一瞬ハッとさせて相手の出鼻をくじく技です。
これを親子のコミュニケーションに応用します。つまり、子どもの頭の中でグルグル回っている思考の回転を、予期せぬ小さな刺激や問いかけで「物理的・感覚的に中断(フリーズ)させる」のです。
「猫だまし」の具体例
- 子どもが「どうせ僕の人生なんて……」「大学行ったって意味ないし……」と悩みや愚痴をグルグル語り始めたとき
- 部屋で険しい顔をして固まり、頭の中で葛藤しているとき
そんなときに、深刻な顔で議論に応じるのではなく、明るくパンッと手を叩いて場面を切り替えたり、まったく関係のない「今すぐできる簡単な指示」を投げかけたりします。
「ハッ」と我に返ったその一瞬こそが、思考の悪循環が途切れた瞬間です。
3. 思考が切れた瞬間に投げかける「スモールステップの指示」
猫だましで思考のループを途切らせたら、間髪入れずに「超・簡単で、今すぐできる行動」を指示します。
ここで「じゃあ今後のことどうする?」と重いテーマを振ってしまうと、子どもは一瞬で元の思考の沼に逆戻りしてしまいます。
指示するのは、心理学でいう「スモールステップ(小さな行動)」です。
- 「さあ、手を洗っておいで」
- 「温かいお茶淹れたから、一杯飲みな」
- 「ちょっとその窓開けて、空気入れ替えて」
- 「ご飯できたから、お皿運ぶの伝って」
ポイントは、「今すぐできて、頭を使わずに済む物理的な行動」であることです。
人間は、行動を起こすと脳の「淡蒼球(たんそうきゅう)」という部分が刺激され、やる気や次の行動へのエネルギー(ドパミン)が分泌される仕組みになっています。
「動くから、気分が変わる」「行動するから、次の展開が見える」のです。頭の中で考えているだけでは気分は変わりません。猫だましで思考を止め、超・簡単な行動をさせることこそが、思考過多から抜け出す唯一のルートです。
支援現場の知見:行動を起こした子から順番に変わっていく
私たち「NPO法人社会復帰支援アウトリーチ」は、2016年の設立以来、10年以上にわたり大人の社会復帰支援に特化し、1,000人以上のひきこもり・不登校当事者やそのご家族を支援してまいりました。大人の社会復帰支援のビジネスプランが評価され、「愛知県知事賞」を受賞した実績もあります。全国の学校関係者や現場の支援員からも日々相談が持ち込まれる専門機関です。
1,000人以上の支援現場で確信しているのは、「悩み抜いた末に答えを出して動き出す子はいない。とりあえず動いてみた子が、結果として悩みを乗り越えていく」という真実です。
子どもが部屋で「どうしよう、どうしよう」と頭を抱えているとき、親まで一緒に深刻な顔をして悩みの沼に付き合う必要はありません。
パンッと手を打つように雰囲気を変え、「さあ、お茶でも飲もう」「手を洗っておいで」と軽く促してあげる。その明るく客観的な親の姿勢が、子どものガチガチに固まった頭をほぐし、次の一歩を踏み出すきっかけを作ります。
まとめ
- 不登校の大学生は「考えすぎて動けない」状態(思考過多・破局視)に陥っている。
- 悩みの中にいる子に「どうするの?」と詰問するのはNG。思考のループを深めるだけ。
- 「猫だまし」のように一瞬で雰囲気を切り替え、思考の回転を物理的にストップさせる。
- 思考が止まった隙に「手を洗う」「お茶を飲む」といった今すぐできる簡単な行動を促す。

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