「本当はどうしたいの?」が本人を追い詰める理由
「本音を話してくれたら、力になれるのに」 「何を考えているのかさえ分かれば、一緒に解決策を探せるのに」 ひきこもるお子さんを持つ親御さんなら、一度はそう思ったことがあるはずです。しかし、残酷な事実をお伝えします。子どもは、親には絶対に本音を言いません。そして、本人ですら自分の本音が分からなくなっているのです。
なぜ対話が成立しないのか。その背景にある、絶望的なまでの「心の距離」についてお話しします。
1. 「理解」は「矯正」の始まりである
子どもにとって、親に本音を語ることは、自ら武装解除をして敵陣に飛び込むようなものです。 なぜなら、これまでの経験上、本音を言えば「それは違う」「もっとこうすべきだ」と否定され、親の価値観に沿うように**矯正(コントロール)**されてきたからです。
「自分の考えを言っても、どうせ理解されない。それどころか、また説教の材料にされるだけだ」 そう確信している相手に、誰が心の内をさらけ出すでしょうか。彼らの沈黙や「別に」「分からない」という言葉は、自分を守るための最後の砦なのです。
2. リスが忘れた「心の木の実」
さらに厄介なのは、本人も自分の本音を「見失っている」という点です。
想像してみてください。リスは冬に備えて、一生懸命に土の中に木の実を埋めます。しかし、あまりにたくさん埋めすぎて、どこに埋めたか忘れてしまうことがあります。 ひきこもる彼らの本音も、これと同じです。
- 「本当はこうしたい」という芽生え: ふと感じた本音があったはず。
- 「こうあらねばならない」という重圧: 社会の目、親の期待、自分への失望。それらが降り積もり、本音の上に分厚い土を被せます。
- 忘却と埋没: 言わないまま心の奥底にしまい込みすぎると、本人もどこに本音があったのか、何が自分の望みだったのか、本当に分からなくなってしまうのです。
そんな状況で「本音を言え」と迫るのは、地図も持たずに真っ暗な森で宝探しをさせるようなもの。語れないのは「隠している」からではなく、**「見つからない」**からなのです。
3. 沈黙を「そのまま」受け入れる
支援の第一歩は、本音を聞き出すことではありません。 「本音を言えない状況」「自分でも分からない状況」を、そのまま丸ごと理解してあげることです。
表面上の取り繕った言葉や、拒絶の沈黙。それを「そうだね」とそのまま受け止めてください。親が「分かろうとすること」を諦め、ただ存在を許容したとき、本人の中に積もった「土」が少しずつ取り除かれ、いつか自ら木の実を掘り起こす日がやってきます。
FAQ:本日の記事に関するよくある質問
Q:本音が分からないままでは、何の対策も立てられない気がします。 A: 対策を立てようとする焦りが、本人を追い詰めます。今は「対策」ではなく「安心」を作る時期です。本音が分からない状態を許容されることで、本人は初めて「自分を責めるエネルギー」を「自分を探すエネルギー」に変えることができます。
Q:本人から「死にたい」などのネガティブな本音が出たときは? A: それもまた、深い土の下から出てきた貴重な「木の実」の一つです。否定せず、「そう思うほど苦しいんだね」と、その感情の存在だけを認めてあげてください。解決しようとしなくていいのです。
【今日のまとめ】 本音は、掘り起こそうとすればするほど深く埋まっていく。 リスが木の実を忘れるように、本人も迷子になっていることを理解してください。

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