在宅ワークを選ぶ理由
アウトリーチの取り組みについてお話しすると、
企業の方や関係者の方から、よくこんな質問を受けます。
「なぜカウンセリングをしないのですか?」
「なぜ、在宅ワークから始めるのですか?」
どちらも、とても自然な疑問だと思います。
一般的な支援のイメージからすると、
少し違和感があるかもしれません。
今日はその違和感について、
アウトリーチがどんな考えのもとで
この支援モデルを選んでいるのかを、
できるだけ整理してお伝えします。
これは、
どこかの方法が正しい、という話ではありません。
アウトリーチがこの形を選んでいる理由の説明です。
ひきこもり当事者の悩みは、どこから生まれているのか
ひきこもり当事者から聞く悩みには、
さまざまなものがあります。
家族との関係がうまくいかない。
人と話すのが怖い。
自分には価値がない気がする。
将来が不安で仕方がない。
一見すると、
人間関係や心の問題が中心のように見えます。
けれど現場で関わっていくと、
多くのケースに共通する状態が見えてきます。
それは、
**「働いていない状態が長く続いている」**ということです。
もちろん、
働いていないことがすべての原因だ、
という単純な話ではありません。
ただ、
働いていない状態が続くことで、
さまざまな悩みが派生的に生まれているケースが
非常に多いのです。
働けていない状態が続くと、何が起きるのか
働いていない状態が長く続くと、
当事者の生活にはいくつかの共通した変化が起きます。
収入がない。
社会との接点がない。
自分が「役に立っている」という感覚を持てない。
この状態が続くと、
自分を評価するための物差しが、
どんどん内側に向いていきます。
「自分はダメなんじゃないか」
「普通じゃないんじゃないか」
そうした考えが、
現実以上に大きく膨らんでいきます。
家族関係も同じです。
収入や役割がないことで、
家庭内の力関係や距離感が崩れやすくなります。
その結果、
本来は環境や構造の問題であるはずのことが、
「性格」や「心の弱さ」の問題として
語られてしまうことが少なくありません。
働けるようになると、悩みが反転することがある
一方で、
働ける状態が少しずつ整ってくると、
不思議な変化が起きることがあります。
収入がわずかでも生まれる。
社会との接点ができる。
「自分の役割」が明確になる。
それだけで、
家族との関係や、
自分自身への見方が
オセロのように反転することがあるのです。
これは、
心が急に強くなったからでも、
考え方が変わったからでもありません。
環境が変わっただけです。
だからアウトリーチでは、
悩みを深く掘り下げる前に、
まず「役割を持てる状態」をつくることを
大切にしています。
なぜアウトリーチは、在宅ワークから始めるのか
では、
なぜその役割として
在宅ワークを選んでいるのでしょうか。
理由は単純です。
通勤。
対面での人間関係。
決まった時間への拘束。
これらは、
ひきこもり状態にある人にとって
非常に大きなハードルになります。
最初の一歩でつまずいてしまうと、
「やっぱり無理だった」という失敗体験だけが
残ってしまいます。
アウトリーチが目指しているのは、
成功体験を積ませることではありません。
失敗体験を増やさないことです。
在宅ワークは、
決して簡単な仕事ではありません。
ただ、最初の一歩として
比較的壊れにくい形で関われる。
それが、
在宅ワークを選んでいる理由です。

カウンセリングをメニューから外している理由
アウトリーチでは、
カウンセリングを支援メニューに置いていません。
それは、
カウンセリングを否定しているからではありません。
当事者の中には、
自分の状況を言葉にすること自体が
大きな負担になる人がいます。
働くために、
わざわざ自分を
「悩みを抱えた人」として
語り直さなければならない。
その構造が、
かえって動きを止めてしまうこともあります。
アウトリーチが目指しているのは、
治す支援ではなく、
生活が回り始める支援です。
そのため、
悩みを語る場よりも、
役割を持てる場を優先しています。
この支援モデルを成立させるために必要なもの
この支援モデルには、
一つだけ、どうしても欠かせないものがあります。
それが、
在宅ワークの受注です。
仕事がなければ、
この仕組みは成立しません。
在宅ワークは、
準備段階ではなく、
支援そのものの一部です。
だからこそ、
企業との連携が不可欠になります。
企業にお願いしていること、お願いしていないこと
ここで、
企業にお願いしていることと、
お願いしていないことを
はっきり分けておきます。
お願いしていること
- 切り出した業務の提供
- 成果物の受け取り
お願いしていないこと
- 当事者への直接対応
- メンタルケア
- 育成や管理
- 責任の引き受け
業務の調整やフォロー、
当事者とのやり取りは、
すべてアウトリーチ側で行います。
企業に、
支援の負担を背負っていただくことはありません。
トラブルや継続についての考え方
仕事が途中で止まることもあります。
継続できないケースもあります。
それらは、
想定外ではありません。
調整や判断は、
アウトリーチ側が引き受けます。
企業にリスクを押しつけない構造で
関係をつくることを、
何より大切にしています。
アウトリーチが企業とつくりたい関係
アウトリーチが目指しているのは、
支援としての協力関係ではありません。
無理のない業務連携として、
静かに、長く続く関係です。
そのため、
すべての企業と組むことは考えていません。
条件が合い、
仕組みを理解したうえで
関わっていただける場合のみ、
ご相談をお受けしています。
支援を「感情」ではなく「構造」で考える
在宅ワークは目的ではなく手段です。
カウンセリングをしないのも、一つの選択です。
アウトリーチは、
支援が回る条件を
社会側と共有しながら、
現実的な形で続けていくことを
大切にしています。
条件が合う場合のみ、ご相談ください
この取り組みは、
条件が合う企業とだけ、
静かに続けています。
仕組みを理解したうえで
関心を持っていただけた場合のみ、
お問い合わせください。
