――本当に届く関わり方とは?
はじめに
ひきこもっている子どもを前にすると、
親は「どうにか助けてあげたい」「苦しみから抜け出してほしい」
という思いでいっぱいになります。
そして、その気持ちのまま
「優しく声をかける」「励ます」「背中を押す」
といった行動に出ることが多くなります。
それは当然のことであり、
むしろ“愛情があってこそ”の行動です。
しかし――
アウトリーチの支援現場で9年見てきた事実は、
ときにこの親の“優しさ”が、
本人の回復を遅らせる場合があるということ。
今日は、その理由と改善策を
できるだけ分かりやすく言語化していきます。
■ 優しさのつもりが、本人には「圧」に変わることがある
ひきこもり状態の子どもは、
人の言葉や気配にとても敏感です。
そのため、
親からの優しいつもりの声かけが、
本人には「プレッシャー」「期待」「圧力」 として届きます。
たとえば――
- 「大丈夫?」
→ 本人には「大丈夫じゃないのが悪いの?」と聞こえることがある - 「いつでも話してね」
→ 本人には「今話せない自分がダメなのでは?」と罪悪感に変わる - 「無理しなくていいよ」
→ 本人には「無理してでも動くと期待されてる?」と感じる - 「あなたの味方だから」
→ 本人には「味方でいてもらうために頑張らなきゃ」と思い込みになる
親は優しさで言っているのに、
本人の心理状態によっては、
まったく違う意味に受け取られてしまうのです。
■ 本人は“優しくされたくない”のではない
誤解してほしくないのは、
本人は親の優しさを嫌っているわけではありません。
ただ、
優しさを受け取る余力がないだけ。
ひきこもっている状態は、
心のエネルギーがほぼゼロに近いため、
人の気持ちを受け取るための“容量”がありません。
だから、
親が優しく接すれば接するほど、
本人は次のように感じてしまいます。
- 応えられない自分がつらい
- 親の期待にこたえなきゃ
- 気を遣わせている
- 申し訳なさが膨らむ
そしてその結果、
部屋から出られなくなり、ますます壁が厚くなる。
これが優しさが裏目に出る理由です。
■ 優しさの前に必要なのは “距離を整える” こと
ひきこもり初期で最も重要なのは、
距離の最適化です。
- 話しすぎない
- 聞きすぎない
- 見守りすぎない
- 気遣いすぎない
これは「冷たくする」という意味ではありません。
親が優しさを出す前に、
本人が安心できる距離をつくることが最優先という意味です。
▼ この距離ができると起こる変化
- 本人の緊張が和らぐ
- 親の足音だけで動悸がする…が減る
- 親への罪悪感が軽くなる
- 部屋の外の気配が怖くなくなる
- 親の言葉を中立に受け取れるようになる
“優しさが届く準備”が整っていくのです。
■ 親が今日からできる「優しさの届け方」3つのコツ
★ ① 声かけを「短く・説明しない・判断しない」に変える
優しい言葉でも長いと“圧”になります。
×「大丈夫?心配しているよ」
×「あなたのペースでいいから話してね」
×「無理すると良くないよ」
これらは意味が良くても、量が多い。
◎「ここにお茶置くね」
◎「今日は静かにしてるね」
◎「ゆっくり休んでね」
“必要最小限”が一番届きます。
★ ② 行動で支える:言葉より「空気の優しさ」
ひきこもり状態では、
言葉よりも“空気の変化”のほうが効きます。
- 生活音を静かにする
- 朝バタバタしない
- 夫婦の会話トーンを少し柔らかく
- ドアを優しく閉める
- 大声で呼ばない
言葉が届かなくても、
空気の優しさは必ず届きます。
★ ③ 親自身の“回復”を優先する
実は、これが最も重要です。
親が
- 不安
- 疲れ
- 自責
- 焦り
を抱えたままだと、その空気が家全体を覆い、
子どもの回復を遅らせます。
だからこそ、
親が安心できる場所を持つことは支援そのものです。
■ 「優しさを減らす」のではない
今日お伝えしたことは、
優しさを止めることではありません。
むしろ逆で、
「正しく届く優しさ」にするために距離を整える
という話です。
優しさは悪いものではありません。
ただ、
“届ける順番”があるだけです。
その順番とは:
- 親が安心する(外側が整う)
- 家の空気が落ち着く
- 本人が外の世界を「安全」と感じる
- 初めて、優しさが届きはじめる
この順番を間違えると、
どれだけ優しくしても届きません。
でも、順番さえ合えば、
親の優しさは子どもの力になります。
■ 一人で抱え込まないで
親御さんが不安を抱えたまま頑張り続けるほど、
家庭の空気が重くなり、子どもは動けなくなります。
あなたが悪いのではありません。
あなたが“苦しかった”だけです。
アウトリーチでは、
親御さんが安心できる場所を用意しています。
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■ 最後に
親の優しさは、必ず子どもを助けます。
ただし、それが“正しく届く状態”をつくるのが先。
あなたの優しさは間違っていません。
ただ、届け方を少し変えるだけで――
その優しさは子どもの大きな力になります。
あなたの今日の気づきが、
家族に新しい空気を運ぎますように。

