「生活保護なんて、ずるい」 世間には、そんな短絡的な批判が溢れています。しかし、支援の現場から見える景色は全く違います。
一度そのセーフティネットに身を預けた人が、自立を目指そうとした瞬間に突きつけられる「構造的な無理難題」。 今日は、精神疾患を抱えるひきこもり当事者が直面する、生活保護という名の設計ミスについてお話しします。
1. 「月給と同額を稼げ」という、非情な返上ハードル
生活保護を返上して自立するためには、最低でも受給額と同等以上の手取りを稼ぎ出さなければなりません。 家賃補助を含めれば、それは「月〜金のフルタイム勤務」を意味します。
考えてみてください。精神疾患を抱え、数年、あるいは十数年の空白期間がある人が、いきなり週40時間労働という「社会の標準」を完璧にこなせるでしょうか。
今の制度は、階段(ステップ)がなく、いきなり「絶壁を登れ」と言っているに等しいのです。登りきれなければ、再び保護の枠内に留まるしかない。これは本人のやる気の問題ではなく、制度そのものの設計ミスです。
2. 15,000円の壁が、就労意欲を削ぎ落とす
現在の仕組みでは、働いて得た収入のうち、手元に残るのは月15,000円程度までです。それ以上稼げば、稼いだ分だけ受給額から差し引かれます(相殺)。
- 議論: 「もっと働いて自立を目指すべきだ」
- 実装: 「働けば働くほど、自由な時間だけが奪われ、手取りは変わらない」
この構造の中にいれば、誰だって「15,000円分だけ働こう」という判断に落ち着きます。これは「甘え」ではなく、現行のルールに適合した極めて合理的な生存戦略です。今の仕組みは、就労の訓練を積むどころか、当事者を「停滞」へと最適化させてしまっています。
3. 貯金すら許されない、将来への遮断
生活保護下では、原則として資産形成(貯金)が制限されます。 自立には、引っ越し費用や万が一の備えなど、まとまった資金が必要です。しかし、その資金を貯めることすら許されない。
「出口」へ向かうための燃料(資金)を積むことを禁じながら、出口へ向かえと急かす。 この矛盾したインフラが、どれほど当事者の絶望を深めているか。世間の「ずるい」という言葉が、いかに浅はかなものであるかがわかります。
4. 増え続けるコストと、社会の窒息
ひきこもりが増え続け、この「抜け出せない構造」に留まる人が増えれば、当然ながら社会保障費は膨れ上がります。
「どうするんだ、この矛盾」
私たちが本気で向き合わなければならないのは、個人の怠慢を責めることではなく、この**「自立を阻害するインフラ」をどう書き換えるか**という一点です。
結びに:必要なのは、脱出するための「スロープ」だ
生活保護を、ただの「延命装置」にしてはいけない。 今の社会に必要なのは、精神疾患やブランクを持つ人が、自分のペースで少しずつ「社会への役割」を増やしていける、傾斜の緩やかなスロープ(仕組み)の実装です。
アウトリーチは、そのスロープの設計図を引き続けます。 議論を止め、この矛盾だらけの構造に、具体的な風穴を開けるために。
📢 議論は飽きた。設計図を手に取る。
- [家族の悩みを、仕組みで解決したい(レコペン・ファシリテーション)]
- [企業の戦力として、業務を連携したい(在宅ワーク連携)]
- [支援の現場に、確かな設計図を導入したい(支援者・行政向け)]

