何も言わない時間が必要になることもある

何か声をかけたほうがいいのか。
それとも、今日は何も言わないほうがいいのか。

この迷いは、
ひきこもりの家族を持つ人なら、
何度も経験していると思います。

何も言わないでいると、
「放っているみたいで怖い」
そんな気持ちになる。

一方で、
何か言えば言ったで、
関係がこじれることもある。

どちらを選んでも、
不安が残る。


昨日の話で書いた
「何か間違えた気がするけど、何かわからない」
という感覚。

その感覚が強くなってくると、
人は、次に何をすればいいのか
わからなくなります。

そこで出てくるのが、
「何かしなきゃ」という焦りです。


声をかける。
情報を渡す。
予定を提案する。
励ます。

どれも、
悪気があってやっているわけではありません。

むしろ、
良かれと思ってやっている。

でも、
その「良かれ」が、
相手にとって重くなることもある。


ここで一度、
はっきりさせておきたいことがあります。

何も言わない時間は、
何もしない時間とは違います。


何も言わないでいるとき、
多くの親は、
頭の中でずっと考えています。

「今日は声をかけないほうがいいかな」
「昨日は疲れていたみたいだし」
「今は刺激しないほうがいいかもしれない」

これは、
放置ではありません。

様子を見ている時間です。


けれど、
この「様子を見る」という行為は、
とても評価されにくい。

目に見えないし、
成果もわかりにくい。

だから、
「何もしていないような気がする」
という不安につながります。


周りから言われることもあります。

「何か言ってあげたほうがいいんじゃない?」
「このままだと、余計に長引くんじゃない?」

そんな言葉を聞くと、
自分の判断が間違っている気がしてくる。


でも、
声をかけることだけが
関わりではありません。

動かすことだけが
支援でもありません。


相手の様子を見ながら、
「今日は何もしない」と決めること。

それは、
簡単なようで、
実はとても勇気のいる判断です。


なぜなら、
何も言わない時間には、
結果がすぐに出ないから。

「正解だったかどうか」
が、後にならないとわからない。

だからこそ、
不安になります。


何も言わないでいるとき、
心の中では、
こんな声が聞こえてくるかもしれません。

「このままでいいのかな」
「私が動かなかったせいで、
 状況が悪くなったらどうしよう」

その不安は、
自然なものです。


ここで大事なのは、
何も言わない時間にも、
役割がある
ということ。


人は、
いつでも何かを受け取れる状態に
いるわけではありません。

疲れているとき。
気力が落ちているとき。
自分でも整理がついていないとき。

そんなときに言葉を投げられても、
受け取れないことがある。


その状態で声をかけ続けると、
相手は、
「理解されていない」
と感じることがあります。

すると、
心の距離が広がる。


何も言わない時間は、
その距離が広がるのを
止める役割を持つことがあります。


ここで勘違いしやすいのは、
「何も言わない=ずっと言わない」
ではないということ。

これは、
一時的な選択です。


・今日は言わない
・今は動かさない
・少し様子を見る

そうやって、
タイミングを待つ。


この判断ができるのは、
これまで関わってきたからです。

何もしてこなかった人には、
この選択はできません。


もし今、
「今日は何も言わないほうがいい」
そう感じているなら、

それは、
逃げではなく、
観察です。


ただし、
ここでひとつ注意があります。

何も言わない時間は、
永遠には続けられません。


ずっと様子を見るだけでは、
どこかで限界が来ます。

不安が積もる。
疲れが溜まる。
自分の気持ちが、置き去りになる。


だからこそ、
何も言わない時間が続いているときは、
別の視点が必要になります。

それは、
「一人で抱えている状態」になっていないか
を確認すること。


このあたりで、
「もう自分一人では考えきれなくなっている」
と感じる人も、少なくありません。

何かを決めたいわけでも、
すぐ動きたいわけでもない。

ただ、
今の判断の状態を、
誰かと一度整理したくなる。

そう感じるタイミングがあります。

相手に何も言わない分、
自分も誰にも言っていない。

その状態が長く続くと、
判断が難しくなります。


この先の話になりますが、
誰かと一緒に考える場があるのは、
こういうときです。

正解を出すためではなく、
「今、何も言えなくなっている理由」を
整理するため。


今日は、
無理に答えを出さなくていい。

声をかけるべきか、
待つべきか、
結論を出さなくていい。


ただ、
「何も言わない時間にも意味がある」
ということだけ、
頭の片隅に置いておいてください。


次回は、
「わかってほしい気持ちが前に出てくる日」
という話をします。

声をかけたくなる背景には、
どんな気持ちがあるのか。

そのあたりを、
少しだけ見ていきます。

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